海幸山幸彦の後編です
前回の続きです。(前編をまだ読んでない人はこちらをどうぞ。)
人生に絶望した山幸彦の前に、一人の謎の老人が立っていました。
謎の老人 「そこの若いの。どうしたんじゃ?
この世の終わりみたいな顔して。」
山幸彦 「え?何?あんた誰?」
謎の老人 「あんだって?」
山幸彦 「、、、」
謎の老人 「ぶおっふぉっふぉっお!(笑い声)」
謎の老人の突然の登場に戸惑う山幸彦でしたが、気づくとこれまでのいきさつを謎の老人に話していました。
謎の老人 「ほうほう。そうかそうか。
それはいろいろと大変じゃったな。」
山幸彦 「オレはもうどうしたらいいかわからないです。」
謎の老人 「いい事を教えてやろう。
おまえの探しているものはあそこにあるぞ。」
山幸彦 「え?」
そう言うと、謎の老人は海のあるか向こうを指差していました。
山幸彦 「いや、だからオレ泳げないし。
もう無理ですよ。」
謎の老人 「ぶおっふぉっ!ほれ!」
ドサッ!!
そう言って謎の老人が手をかざすと、なんと!突然砂浜に「木の船」が現れました。
謎の老人 「ほれ。これに乗ってけ。」
山幸彦 「いやいや!だからオレ泳げないし、
だいたいこれどうやって動かすのかわからないし!」
謎の老人 「あーはいはい。ほれほれほれ、、」
山幸彦 「ちょっと!じいさん聞いてます?
いっいや~~~!」
謎の老人は半ば無理やりに山幸彦を木の船に乗せてしまいました。
山幸彦が船に乗ると、どういう原理なのか木の船は突然動き出し、ものすごいスピードで大海原に飛び出していきました。
山幸彦 「いっいやぁーーーーっ!!」
謎の老人 「ぶおっふぉっふぉっ!」
船はあっという間に大海原を進み、砂浜にいる謎の老人は米粒ぐらいの大きさにしか見えなくなりました。
山幸彦 「え~~。これからどうすればいいんだよ~!?」
しばらく大海原を進んでいた木の船は突然、海の中に潜り始めました。
山幸彦 「ええーーっ!?ちょっとーー聞いてないよー!?
お、溺れるぅ~!!」
ブクブクブク、、、
山幸彦、海の中へ
山幸彦 「あれ?息ができる?なんで?」
海の中に潜った木の船でしたが、不思議なことに大きなシャボン玉のようなものに包まれて、山幸彦は溺れずにすみました。
しばらく暗い海底を進んでいくと、急に明るい場所が現れました。
そこにはおとぎ話の中に出てくる竜宮城のような立派な建物があって、木の船はその中に吸い込まれるように入っていきます。
竜宮城のような建物の中にはたくさんのキレイな女性がいて、なぜか山幸彦を大歓迎してくれました。
しばらくすると奥から王様のような風格をもった人が現れます。
実はこの人物はこの建物の主で「海神(わだつみ)」という海の神様です。
わだつみ 「ん~若いの。こんな海の底までよくいらした。」
山幸彦 「あ、え~はじめまして私は山幸彦という者です。実は、、」
山幸彦は兄海幸彦の大事な釣り針を無くしたことや、その後謎の老人のせい(おかげ)でここまでたどり着いたことなどをわだつみに説明しました。
わだつみ 「そうか。そうか。それは大変な思いをしたな。
まあとにかく今はゆっくり体を休めなさい。」
山幸彦 「は、はい!ありがとうございます!」
ここでの生活は本当に楽しく、美味しい料理に美味しいお酒。
キレイな女性もみんな優しく、山幸彦にとってまさに天国のような場所でした。
その中でも一際キレイな女性がいました。
その女性とはわだつみの娘「豊玉姫」です。
山幸彦は豊玉姫をすっかり気に入ってしまい、また豊玉姫も山幸彦のことを好きになっていきました。
毎日毎日、美味しい料理とお酒。
まわりには優しくてキレイな女性ばかり。
豊玉姫ともすっかり意気投合し、夢のような時間は過ぎていきます。
山幸彦、旅の目的を思い出す
、、、そして3年後。
(´_ゝ`)え?
気づけば山幸彦が釣り針を探しにこの場所に来てから、「3年」という月日が経っていました。
山幸彦 「ん?ちょっと待てよ?そもそもオレはこの場所に何しに来たんだ?」
「、、、そうだ!!アニキの大事な釣り針を探しに来たんだ!!」
ようやく本来の目的を思い出した山幸彦は、海の神わだつみに言います。
山幸彦 「今までお世話になり本当にありがとうございます。
ただオレにはどうしてもやらなければいけない事があります!
だからもうここにはいれません!すいません!!」
実は山幸彦はこの3年の間に、わだつみの娘、豊玉姫と結婚をしていました。
この時、豊玉姫はとても悲しそうな顔をしていましたが、こうなる事をうすうす予感していた豊玉姫は、山幸彦を止める事はしませんでした。
そして山幸彦の真剣な顔を見たわだつみは、
わだつみ 「、、、うむそうか。わかった。
おまえは大切な娘の婿だ。
そのなくした兄の釣り針を探してやろう。
魚たちよ集まれい!」
海の神そうわだつみが言うと、窓の外の海には無数の魚たちが集まってきました。
するとわだつみは魚たちに向かって言います。
わだつみ 「3年ほど前に山幸彦の兄の釣り針を食ったやつを知らんか?」
魚たちは一斉に会議らしい事をはじめて、ある魚(ヒラメ)がこう言います。
ヒラメ 「わだつみ様!3年前にタイの五郎がそれらしき変わった釣り針を飲み込んでるみたいです!」
わだつみ 「よし!そいつをすぐ呼べ!」
しばらくそんなやり取りを見ているうちに、わだつみが山幸彦を呼びます。
わだつみ 「お前の探していた釣り針はこれか?」
山幸彦 「!!?」
山幸彦 「はい!!これです!!
3年前にオレがなくしたアニキの釣り針です!
わだつみ様本当にありがとうございます!
これでアニキに許してもらえます!
ありがとうございます!」
わだつみ 「そうか。それはよかった。
今すぐ兄の所へ持って行ってきなさい。」
わだつみ 「ただし、、、」
山幸彦 「はい?」
わだつみ 「いいか山幸彦よ。
これからお前の兄にこの釣り針を返す時、
心の中でこう思いなさい。」
「つまらない針。」
「貧しい針。」
「上手くいかない針。」
「どうでもいい針。」
わだつみ 「、、、山幸彦よわかったか?」
山幸彦 「え?あ、はい。わかりました。」
わだつみ 「あともう一つ。兄の所に戻ったら、
今後は兄と「逆の行動」をしなさい。」
山幸彦 「え?逆?、、はい。わかりました。」
なんだか、わだつみの言うことの意味がわからない山幸彦でしたが、わだつみの雰囲気と眼力に圧倒されて「はい。」としか返事ができませんでした。
わだつみ 「最後にこれを持っていきなさい。
おまえが地上に戻り困った時に使うといい。」
そう言ってわだつみは「潮満玉」と「潮干玉」という二つの玉を、山幸彦に渡しました。
山幸彦「あ、はい。ありがとうございます。(なんだこの玉?)」
わだつみに不思議な玉までもらった山幸彦は、さらに困惑した様子です。
わだつみ 「よし。一刻も早く兄の元へ返してやろう。」
バッ!!
そう言ってわだつみが手をかざすと、山幸彦は気を失ってしまいます。
なくした釣り針を兄の元へ
、、、
「ザザ~ン」
、、、
「ザザ~ン」
山幸彦 「、、、ん?ここは?」
山幸彦が気づくとそこは、謎の老人と出会った夕暮れの見慣れた砂浜でした。
そしてこの時実はまだ山幸彦は気づいてませんが、3年前の旅立った時間に戻っていました。
山幸彦 「、、、あの出来事は夢だったんだろうか?」
そう思って山幸彦は自分のポケットに手を入れると、兄の「釣り針」と「二つの玉」があります。
山幸彦 「、、やっぱり夢なんかじゃなかったんだ!
そうだ!急いでアニキのところに持って行こう!」
自分に起きた出来事が夢ではなかったと確信した山幸彦は、兄の大事な釣り針を返すべく、走って海幸彦の元へ向かいます。
山幸彦 「アニキ~!!なくしたアニキの釣り針見つかったぞ~!」
海幸彦 「何!?釣り針が見つかった!?
どれ本物か見せてみろ!」
山幸彦は兄の海幸彦に釣り針を渡す時、わだつみに言われたように心の中でこう思います。
山幸彦 「(この針はつまらない針。)」
「(この針は貧しい針。)」
「(この針は上手くいかない針。)」
「(この針はどうでもいい針。)」
山幸彦は心の中でこう思いながら釣り針を返しました。
海幸彦 「まったく。余計な心配させやがって。
もうおまえには二度と大事な釣り針貸さないからな!」
山幸彦 「アニキ、3年も待たせてしまって本当にすまなかった。」
海幸彦 「3年?なに言ってんだおまえ。
まあいいや、オレはさっそく今から釣りに行ってくるからな。
じゃあな。」
そう言って大事な釣り針が戻ってきた海幸彦は上機嫌で海へと向かいました。
とりあえず兄の大事な釣り針を返す事ができた山幸彦は一安心して、自分の山小屋に帰ります。
しばらくして、すべての問題が解決したと思ってほっこりしていた山幸彦の元に、兄海幸彦が鬼のような形相をして訪れます。
海幸彦 「おい山幸彦!
お前あの釣り針になにかしたのか!?」
山幸彦 「え?別になんにもしてないよ?」
海幸彦 「嘘をつくな!あれだけ魚が釣れていたのに、
おまえに返してもらってから魚がまったく釣れなくなったぞ!!
どうしてくれるんだーー!!ウオーー!!」
山幸彦 「ギャアーーっ!!アニキやめてくれーー!!」
やっと大事な釣り針が自分の元に返ってきたと思ったら、今度はまったく魚が釣れなくなってしまった事に腹を立てた海幸彦は、山幸彦の山小屋で暴れ出してしまいます。
山幸彦 「やめてくれアニキーー!
もう勘弁してくれーーっ!」
暴れまくる海幸彦に困った山幸彦は、海の神わだつみの言葉を思い出します。
「おまえが地上に戻り、困ったことがあれば使うといい。」
山幸彦はとっさにポケットにあった玉の一つ、潮満玉を手に取り海幸彦に向けて掲げました。
ザバザバーーン!!
なんと潮満玉から大量の海水が放出され、みるみる海幸彦の体にまとわりつき、巨大な海水の玉の中に海幸彦は閉じ込められてしまいます。
海幸彦 「ゴバッ!?ゴボボボーーっ!!」
巨大な海水の玉の中で海幸彦は息ができずに溺れています。
山幸彦 「あわをわ~!アニキ~!」
何が起こっているのかわけがわからない山幸彦は、ポケットにあったもう一つの玉、潮干玉を掲げました。
シュオオオーー!
すると巨大な海水の玉はものすごい勢いで、潮干玉の中に吸収されてしまいました。
海幸彦 「ゲホッ!ゲホッ!おまえなんだこれ!?
ふざけるなよ!ウォーー!」
わけもわからずに溺れそうになった海幸彦は、山幸彦に殴りかかろうとします。
焦った山幸彦はとっさに潮満玉を掲げました。
海幸彦 「ゴボボボーー!!」
そしてまた潮干玉を使って大量の海水を戻します。
海幸彦 「わ、わかった!もういい。オレは帰る。」
これにはさすがの海幸彦も参ってしまい、怒るのを諦めて自分の小屋へと帰っていきました。
魚が釣れなくなってしまった海幸彦は、自分の小屋の前の低い土地に畑を作り始めました。
その様子を見ていた山幸彦は、また海の神わだつみの言っていた言葉を思い出します。
「兄と逆の行動をしなさい。」
兄の海幸彦は「低い」場所に畑を作っていたので、山幸彦は逆に「高い」場所に畑を作ります。
しばらくして、農作物がいよいよ育ってきた頃に、今までなかったような大雨が降り続いて水害が発生しました。
低い土地に作っていた海幸彦の畑は、水害によって全滅してしまいます。
逆に高い土地の山幸彦の畑は無事です。
またも激怒する海幸彦でしたが、また山幸彦の所に行っても不思議な玉に水攻めされるとわかっていたので、諦めて今度は山幸彦と同じ高い土地に畑を作り始めました。
海幸彦 「よ~し。これで今度こそ大丈夫だ。」
その様子を見ていた山幸彦は、今度は海幸彦の逆の低い土地に畑を作り始めました。
しばらくして、作物が育ってきた頃に今度は暴風が吹き荒れる台風がやってきました。
高い土地に作っていた海幸彦の畑は、暴風が直撃してまたもや全滅してしまいます。
逆に低い土地にあった山幸彦の畑は、風の影響を受けにくく助かりました。
海幸彦 「ちくしょー!なんでオレばっかー!!」
怒りの矛先は弟の山幸彦の元へ向かい、玉の事も忘れた海幸彦は山幸彦の所に怒鳴り込みます。
海幸彦 「山幸彦おまえー!なんでおまえの畑だけ無事なんだー!?
おまえ何か知ってるんだろー!
ウォーーっ!!」
山幸彦 「うわーーっ!!アニキやめてくれーー!」
海幸彦に殴られそうになった山幸彦は、とっさにまた潮満玉を出します。
海幸彦 「ムゴゴーーーっ!!」
そしてまた例のごとく潮干玉を出します。
海幸彦 「ゲホッ!おまえ本当にふざける、、
ゴボボボーーっ!!」
山幸彦は潮満玉、潮干玉、潮満玉、潮干玉と交互に使うと、次第に海幸彦の怒りのテンションも下がっていきます。
海幸彦 「ゲホッ!ハアハア、、、
わかったから、もうやめてくれ。
これからはもうおまえの言うことに従うよ、、」
もう山幸彦には勝てないと悟った海幸彦は、弟の山幸彦の意見も尊重し共に協力して生きていくことにしました。
こうして海幸彦山幸彦は、共に協力し合い、たまにケンカもするけど兄弟仲良く暮らしていきました。
とさ。めでたしめでたし。
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はいここまで。
どうでしたか?
かなりざっくりとしたストーリー展開アンド僕のアドリブの効いたセリフでしたが、笑 これが日本神話「海幸彦山幸彦」の全体的なストーリーです。
本当はこの話にはもう少し続きがあって、この後わだつみの娘の豊玉姫が再登場したり、海幸彦はこの後、踊りの神になったりとあるんですけど、また長くなるのし今回伝えたい部分とはあまり関係ないので割愛します。
で。
ここまで「前編」「後編」と二回に分けてお話してきたこの「海幸彦山幸彦」という日本神話を、次回「解説編」ということで説明していきます。
この神話から見えてくる「人生の壁を乗り越えるヒント」とはどういう事なのか?
次回、海幸彦山幸彦「解説編」を期待せずにお楽しみに。